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ギルベルト
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……霧が出てきましたな。
これでは進軍もままなりません。
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ロドリグ
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まあ、どのみち霧が晴れるまでは
動けんのです。気長に待つとしましょうよ。
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ロドリグ
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ギルベルト殿……いや、ギュスタヴ殿。
この機に、話しておきたいことが。
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ロドリグ
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「ダスカーの悲劇」と呼ばれたあの事件。
あのことで、腑に落ちぬことがありまして。
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ロドリグ
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私もあの日、ダスカーで倅を失った身。
あの事件については、手を尽くして調べた。
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ロドリグ
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驚いたのですが……パトリシア様の馬車には
争ったような形跡すらなかったとか。
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ロドリグ
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瀕死の重傷で済んだ殿下を除いて、他の者は
全員その場で惨殺されていたというのに……
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ロドリグ
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陛下の後妻であるパトリシア様のご遺体
だけが、見つからなかったんですよね?
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ギルベルト
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……連れ去られたということでしょう。
争った跡がなかったのは脅されたからで……
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ロドリグ
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なぜ、連れ去る必要があったんです?
殺してしまえば済む話ではありませんか。
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ロドリグ
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これまで、パトリシア様の存在が
外交の場で利用されたことはありましたか?
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ギルベルト
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……いえ、私の知る限りでは。……ならば、
帝国内の政争に利用されたのでは?
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ロドリグ
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実の娘が皇帝となった今、
その存在を隠す必要がどこにあるんです。
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ギルベルト
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………………。それは、帝国に
戻られてから亡くなられた、とか……。
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ロドリグ
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ギュスタヴ殿。もし、パトリシア様が
あの事件の根幹に関わっているとすれば……
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ギルベルト
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……ロドリグ殿。あのお方への侮辱は、
いくらあなたとて、許されることではない。
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ロドリグ
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いえ、何も、あの方が裏で糸を引き、陛下を
謀殺したとまで言うつもりはありません。
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ロドリグ
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ですがギュスタヴ殿……私には、あの事件が
何か大きな陰謀の一端であるような……
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ロドリグ
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……何か、きな臭さのようなものを
感じてならんのですよ。
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王国兵
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失礼します! ロドリグ様、ギルベルト様!
すぐにこちらへ!
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ロドリグ
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レスターの盟主に派遣した騎士の一人だな。
いつ、どこで見つかった?
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王国兵
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は、先ほど哨戒に出た兵士が、
近くの岩場で発見したそうです。
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王国兵
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恐らくは、
同盟の者が打ち捨てていったものかと……
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ギルベルト
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……我々と共闘する気はない、という
同盟側の意思表示でしょうか?
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ロドリグ
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さて……同盟諸侯の思惑も様々ですし、
誰の仕業やら何とも判断し難いですな。
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ロドリグ
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事の真相はわかりませんが、いずれにせよ、
派遣した他の騎士も無事ではありますまい。
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ロドリグ
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これで、同盟との連合は難しくなったと
考えるべきでしょう。
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ギルベルト
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カロン伯から助力を得られたとはいえ、
厳しい状況になりましたね……。
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ディミトリ
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……同盟の助けなど、
端から期待していなかった。