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アルファルド
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……大修道院で生まれ育った私にとって、
彼女こそが、この世界のすべてだった。
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アルファルド
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共に学んだことも、共に歩いたことも、
彼女との記憶は、何もかもが眩しかった。
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アルファルド
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……それが彼女の幸福だというなら。
私は、その門出を笑顔で見送ろう。
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アルファルド
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彼ならば、きっと彼女を笑顔にしてくれる。
私は、それで良かったのだ。
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アルファルド
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修道院という閉じた世界しか知らぬ彼女に、
彼は、広い世界を与えた。
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アルファルド
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目を輝かせて、彼の話をする彼女を……
彼と婚約を交わしたと微笑む彼女を……
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アルファルド
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君の笑顔を遠くで眺めていられれば、
私はそれだけで良かったのだ。
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アルファルド
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愛した男との間に産んだ子の顔を
その目で見ることもないままに。
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アルファルド
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葬儀がしめやかに行われ、
墓地に埋葬される彼女を私たちは見送った。
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アルファルド
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彼女の物語に終止符が打たれ……
そこに、疑念の余地はなかった。
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アルファルド
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……10年前、私がアビスの隠し通路の先で
忘れ得ぬ面影の、亡骸を目にするまでは。