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フェリクス
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待て、犬。
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ドゥドゥー
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……誰のことだ。
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フェリクス
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お前以外に誰がいる? あの猪の忠犬だろう、お前は。
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ドゥドゥー
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……フェリクス。 貴様、殿下を愚弄するか。
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フェリクス
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ふ、その物言い、まさしく犬だな。
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フェリクス
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なぜ、それほどまでに奴に従う。 あの男はそれに値するだけの人間か。
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ドゥドゥー
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……おれの故郷は、 ファーガスによって滅びた。
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ドゥドゥー
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同胞たちは皆、慈悲もなく殺され 街は何もかもが焼き払われた。
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フェリクス
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……ダスカー人への制裁、か。
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ドゥドゥー
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父も母も、兄弟も、皆殺された。 誰も助けてはくれなかった。
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ドゥドゥー
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人としての尊厳も、民族の矜持も奪われて ……だが、殿下だけは違った。
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ドゥドゥー
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あの方だけは……ただ一人、 おれたちを人間だと認めてくれた。
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ドゥドゥー
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命を懸けてまで、おれを救ってくれた。 一度死んだおれに生きる目的をくれた……。
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フェリクス
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……それを、世間では妄信と言うのだがな。
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フェリクス
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ではお前は、 奴に命を捨てろと言われたら捨てるのか。
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ドゥドゥー
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捨てる。
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フェリクス
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無用な虐殺を命じられたら。
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ドゥドゥー
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殺す。
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フェリクス
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相手が無力な幼子や老人であっても…… たとえかつての同胞であってもか。
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ドゥドゥー
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無論だ。
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ドゥドゥー
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……フェリクス、 お前は何か思い違いをしているようだな。
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ドゥドゥー
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おれは殿下の剣であり盾。 武器に意思など必要ない。
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フェリクス
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……チッ、どいつもこいつも。
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フェリクス
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そうだな、俺は誤解をしていた。 お前を犬などと呼ぶべきではなかったな。
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フェリクス
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犬は犬でも、お前は狂犬だ。 あの猪には似合いだな。
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ドゥドゥー
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……言ったはずだ。 殿下を愚弄するな、と。
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ドゥドゥー
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殿下と付き合いの長いお前だからこそ 許容してきたが、これ以上の暴言は……!
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フェリクス
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聞きたいことは聞けた。 さっさと飼い主のところへ帰れ。