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イグナーツ
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あ、ツィリルくん。
外を眺めてたんだ。君はこれから仕事?
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ツィリル
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うん。昨日の雨で出来た大きな水たまり。
邪魔だから掃き出して片づけないと。
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イグナーツ
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ああ、あそこに見えるやつだね。
片づけちゃうのか、残念だな。
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イグナーツ
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水たまりのある風景を楽しんでたから。
あ、でも気にしないで仕事してね。
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イグナーツ
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いつもの風景に水たまりが加わるだけで、
急に雰囲気が変わるし。それに……
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イグナーツ
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同じ形の水たまりは二度とできないよ。
映る太陽だって二度と同じ輝きを見せない。
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イグナーツ
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今、この瞬間だけの美しい風景。
そう思うと、見逃したくないって思わない?
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ツィリル
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……あれ? イグナーツの話を聞いてたら、
そんな気になっちゃってた。
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ツィリル
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雨上がりの景色なんて、
気に留めたこともなかったのに。
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イグナーツ
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それは、ツィリルくんの心が
今、穏やかだからかもしれないね。
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イグナーツ
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景色の見え方って、
その時の心の状態が影響するから。
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ツィリル
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……ボクの記憶にあるパルミラの景色は、
くすんでいて、寂しい景色なんだ。
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ツィリル
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街から離れるとね、本当に何もなくて。
どこまで行っても空と草原しか見えなくて。
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ツィリル
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自分が本当にそこにいるのか、わからなく
なるような……そんな景色だったんだ。
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ツィリル
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だけど不思議だな。今、思い出していたら、
すごく雄大で綺麗だった気もしてきた。
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イグナーツ
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心の状態によって、記憶の中の景色も
変わってくるのかもしれないね。
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イグナーツ
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どこまで行っても空と草原しかない風景か。
パルミラには、そんな場所があるんだね。
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ツィリル
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変だよ。風景のこと考えて、
うっとりした顔して。そんな人いないよ。
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イグナーツ
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あはは……まあ、確かにそうかも。
でも、行きたいなあ、パルミラ。
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イグナーツ
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ねえ、ツィリルくん。
いつか平和になったら、一緒に行かない?
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イグナーツ
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故郷の記憶が、くすんだ景色のままじゃ
もったいないしさ!
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ツィリル
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もったいない? そうなのかな。
でも……うん、考えとくよ。