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ローレンツ
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……ふむ、流石は僕だな。
見立てに狂いなし、実に上質な茶葉だ。
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ローレンツ
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やあ、ツィリル。芳しい紅茶の香りに
誘われて来たのかね?
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ローレンツ
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……ん? ああ、先生か。
先ほど、父から珍しく手紙が届いてね。
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ローレンツ
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……ん? ああ、先生か。
残念ながら恋文じゃない。父からの手紙だ。
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ローレンツ
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アケロンと小競り合いが起きてるから、
領地に戻って対処するように、と。
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ローレンツ
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グロスタール家に隣接する若い領主だよ。
先生はミルディン大橋を知っているか?
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ローレンツ
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アミッド大河をまたぐ古い橋でね、
帝国領と同盟領を繋ぐ要地なんだが……
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ローレンツ
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その橋の北側を支配地にしているのが、
アケロンだ。
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ローレンツ
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要地を押さえている強みで、周辺諸侯とは
よく諍いを起こしていてね。
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ローレンツ
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今回も散々話し合ったはずの領界問題を
蒸し返して、兵まで出しているらしい。
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ローレンツ
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近隣の村に被害が出る前に、
さっさと追い返さねばならんな……。
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ローレンツ
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父にとってアケロンなど些事。もっと大きな
諸侯との駆け引きで忙しいのだろうよ。
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ローレンツ
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ゴネリル家、コーデリア家、エドマンド家、
それに盟主のリーガン家……。
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ローレンツ
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同盟の円卓会議で自身の意見を通すため、
いつも事前の根回しに余念がない。
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ローレンツ
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レスター諸侯同盟というのは、
そういうところなのだよ、先生。
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ローレンツ
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元々が王国から分離して成立した同盟だ。
自立心を尊ぶ一方で協調性を欠く。
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ローレンツ
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相互扶助を謳ってはいるが、
その実、利己的で身勝手な諸侯の集合体だ。
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ローレンツ
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今の盟主、リーガン公爵家には、
それをまとめるだけの力量もない。
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ローレンツ
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だから、表向きは不戦を約していても、
こんな小競り合いは日常茶飯事でね。
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ローレンツ
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……そうだ、先生。
良かったら一緒に来てくれないか?
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ローレンツ
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無能なアケロンなどを恐れる僕ではないが、
先生にも同盟の実情を見てもらいたくてね。
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ローレンツ
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いずれ同盟の未来を担う僕としては、
理解者を増やしておきたいのだ。
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ローレンツ
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金鹿の学級を抜けたとはいえ、
いずれ同盟の未来を担うのはこの僕だ。
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ローレンツ
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その時に備えて、
理解者は増やしておきたいのでね。
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ローレンツ
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先生にとっても、見聞を広めることに
損はないはずだろう?
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ローレンツ
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よし、じゃあ決まりだ!
すぐに出発するから支度を頼むよ。
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ローレンツ
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まあ、先生も忙しい身だろうから、
無理にとは言わない。
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ローレンツ
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あまり長くは待てないが、
もし気が向いたら声をかけてくれたまえ。