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アッシュ
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イングリット、この物語を知っていますか?
フォドラの喉元の戦いを題材にした……
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アッシュ
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このお話、沢山の騎士が出てきますけど、
君は誰が一番好きですか?
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アッシュ
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僕は、中盤に出てくる……彼に憧れます。
公爵を守ったと言われるこの騎士ですね。
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アッシュ
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本当ですか? 僕、彼の高潔なところが、
何となく君に似てるなって思ってたんです。
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イングリット
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……そ、そんな。それを言うなら、あなたの
誠実さも、彼によく似ていると思いますよ。
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アッシュ
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い、いえ! 僕なんて、まだまだ未熟で。
……でも、いつかはこんな騎士になりたい。
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アッシュ
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イングリット、僕らも研鑽しあって、
共に彼のような騎士を目指しましょう!
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イングリット
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共に……ええ。そう、ですね。
本当にそうできたら、どんなに良いか。
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イングリット
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アッシュ。物語は、物語です。
現実はそんなふうに、上手くはいきません。
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イングリット
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どれほど高潔で、どれほど誠実でも……
背負わされた役目には、抗えないのです。
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イングリット
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私も、貴人の側に仕え、
その身を守る騎士に憧れてきました。
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イングリット
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ですが……私は紋章を持って生まれた、
ガラテア家の「希望」でしたから。
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イングリット
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傾いた家の再興のため、血の存続のため。
私は夢を、捨てねばなりませんでした。
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イングリット
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こうしてガラテア家を出た今も、
私の負うべき使命は変わらない……。
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アッシュ
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そんな……でも、君にだって、
夢を叶える権利はあるはずで……
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イングリット
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……アッシュ。あなたにお願いがあります。
聞いてくれますか?
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アッシュ
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僕の夢を……君の夢に?
それは、どういう……
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イングリット
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私の夢は、きっと叶いません。たとえ
叶ったとしても、必ず誰かが不幸になる。
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イングリット
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……ですから、せめてあなたが立派な騎士に
なれるよう、応援したいのです。
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アッシュ
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イングリット……。
君らしくないですよ、そんなの!
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アッシュ
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……そんな寂しそうな顔で
笑わないでください。