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ユーリス
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……わざわざ呼び出しに応じたってことは、
今から俺が何を言うか、想像ついてるよな。
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ユーリス
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本当かよ……あんたの場合、本気で鈍いのか
どうなのかわからねえから腹が立つな。
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ユーリス
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しらばっくれるなよ……あんたって
昔からそういうところ、あるよなあ……。
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ユーリス
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今のあんたはセイロス聖教会の大司教。
つまり雲の上より高いところの人。
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ユーリス
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今のあんたは女帝の寵愛を受けた臣下。
もっと偉そうにしてたって良い立場。
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ユーリス
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今のあんたはフォドラの王様。
つまり世界で一番偉い奴。
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ユーリス
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そんな相手と比べたら、
俺は、何も持ってないも同然だ。
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ユーリス
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野望と、部下と、ちょっとの金と、
それからこの顔くらいかな。
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ユーリス
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……聞かせてくれ、先生。あんたには
そんな男を、己の懐に入れる覚悟はあるか?
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ユーリス
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……ははっ、まあ、そうか。
あんたはそういう奴だったよな。
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ユーリス
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ほら、じゃあこいつを受け取れ。
口実としてはまあ、いつかの礼ってことで。
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ユーリス
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覚えてねえか?
まあ、もう5年も前の話だもんな。
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ユーリス
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あんたを、俺たちの縄張り争いに
巻き込んじまった時の礼だよ。
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ユーリス
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受けた恩はきっちり返す。
それが俺の信条だ。
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ユーリス
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だが、どうしても要らねえって言うなら、
こっちにも考えがある。
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ユーリス
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はは、あんたらしいな……じゃあもう、
礼って名目じゃなくてもいいや。
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ユーリス
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取引だ。
この指輪を対価に、あんたが欲しい。
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ユーリス
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……馬鹿かあんたは。
それを言わせるんじゃねえ。
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ユーリス
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言われたことは何度もあるが、いざ自分で
言うとなると結構恥ずかしいんだよ。
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ユーリス
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いくら鈍いあんたでも、
流石にわかるだろ、こいつの意味くらい。
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ユーリス
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……俺はさ、手の届くところにいる奴を、
一人でも救えればそれで十分だと思ってた。
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ユーリス
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けど今は、貧しさだとかくだらねえ理由で
命を落とす奴のいなくなった未来を……
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ユーリス
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見届けたくなったんだ。そんな大層な
夢が叶うとは思ってもみなかったくせにさ。
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ユーリス
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……あんたは不思議な人だよ。俺を、
夢の先に連れて行ってくれる気がする。
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ユーリス
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だが、贅沢を言おうってわけじゃない。
流石の俺様も、人間だ。死ぬ時は死ぬ。
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ユーリス
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そうなれば、誰かが組織の頭を継ぐはずだ。
そのための準備も調えてある。
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ユーリス
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そいつらがしぶとく生き続けている限り、
俺の夢も、終わることはないはずさ。
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ユーリス
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俺の名は消えて、組織と、夢だけが残る。
それでいいはずだったんだ、最初は……。
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ユーリス
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けど……いつか俺が死んだ時、
俺の名前を記してくれる人がいてほしい。
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ユーリス
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そしてそれは他でもない、あんたがいい。
そう思っちまったんだよ。
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ユーリス
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……な、何だよ。
何か妙なことでも言ったかよ。
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ユーリス
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だからそれはもしもの時の話で……
……はあ、まあ、いいや。
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ユーリス
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確かに、あんたが欲しいと言ったその口で
死んだ後の話をするなんて、失礼だったな。
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ユーリス
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ああ……そっか。
まだ教えてやってなかったな、俺の名前。
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ユーリス
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悪い、勿体つけてたわけじゃないんだが、
立場上むやみに吹聴できなかったっつーか。
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ユーリス
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覚えててくれ、ベレト。
俺の、本当の名前は――