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イングリット
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どうしたの、フェリクス。
食堂の掃除を代わってくれるだなんて。
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フェリクス
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……とろくさくて見ていられん。
怪我人は引っ込んでいろ、邪魔だ。
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イングリット
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大丈夫よ、大事には至らなかったし。
あなたも無事に済んだしね。
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イングリット
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はいはい、余計なお世話だったかもね。
だけど、万が一ってこともあるでしょ。
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イングリット
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やっぱり私、迷いを捨てるなんてできない。
……騎士になんてきっと向いていない。
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イングリット
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騎士になれないとしたら、
私が戦いでできることって何なのか……。
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イングリット
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悩んで、やっと答えが見つかったの。
……私は、もう誰も失いたくない。
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フェリクス
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そんな理由で、俺を庇ったのか。
……とんだ阿呆だな、お前は。
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イングリット
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『主君の命を遂行中、自らの領地が危機に
陥った場合、どちらを優先すべきか。』
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イングリット
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少なくともあの本の編者は、
主命を優先すべきとは残していなかったわ。
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イングリット
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主君ではなく、己の心に従えと。
それが、騎士の……人の在るべき姿だと。
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イングリット
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きっとグレンも、国や王家ではなくて、
自分の心に従って死んだんだって。
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イングリット
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それは、無念ではあっただろうけど……
もし生き残っても、彼は苦しんだと思う。
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イングリット
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私は……私も、私の心を信じて戦う。
どんな状況でも、私は私を信じるわ。
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フェリクス
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一緒にするな。俺が何のために、
誰よりも強くなりたいと……
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イングリット
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誰より強くなってみんなを守れば、
きっと、もう大切な人を失わずに済む。
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フェリクス
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だが、今回のようなことはもうやめろ。
……お前に死なれては後味が悪い。
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イングリット
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なら、そもそも危険な状況に陥らないよう、
一日も早く誰より強くなることね。