link
フレン
volume_up
お兄様……。また、わたくしに
文句を仰りにいらっしゃったんですの?
link
セテス
volume_up
いや。お前こそ、私に文句が
あるのではないのか?
link
フレン
volume_up
いいえ。だって、わたくしが何をしても
お兄様はわたくしを心配なさるでしょう?
link
セテス
volume_up
……そうだな。確かに私は、お前がどこで
何をしていても、お前を心配するだろう。
link
セテス
volume_up
だが、私はあくまで兄として、
妹のお前を大切に思っているだけなんだ。
link
セテス
volume_up
お前を苦しめたい訳ではない。
それだけはわかってほしい。
link
フレン
volume_up
大切に思ってくださるのは嬉しいですし、
感謝もしていますわ。
link
フレン
volume_up
それに、お兄様が過保護になったのは、
幼かったわたくしのせいなのですから……
link
フレン
volume_up
わたくしがお兄様を責められるはずが
ございませんもの。
link
セテス
volume_up
フレン。お前は悪くない。
悪いのは私だ。
link
セテス
volume_up
かの会戦で、幼いお前に負担をかけすぎた。
戦力の不足など、何の言い訳にもならん。
link
セテス
volume_up
その上、お前の不調に気づかず、我が妻……
お前の母までも危険に晒し、そして失った。
link
セテス
volume_up
戦後、たびたび休眠を取らなければ
生きていけない体になったお前を見て……
link
セテス
volume_up
私は誓ったんだ。残りの生のすべてを
懸けて、お前を守り抜くと。
link
フレン
volume_up
確かに、この体になってから、
眠るのがとても恐ろしくなりましたわ。
link
フレン
volume_up
けれど……それでもわたくしは、
寂しく暮らすほうが嫌なんですの。
link
フレン
volume_up
今だけでも、他の皆さんと同じ、
普通の女の子として暮らしたいんですのよ。
link
フレン
volume_up
皆さんと一緒に生きて、一緒に戦った……
お父様とお母様がいた、あの頃のように。
link
セテス
volume_up
……そうか。そう、だな。
いつかお前は、私の元を離れていくのだ。
link
セテス
volume_up
どれほどの時代を越えて生きようとも、
これだけは変わらない……。
link
フレン
volume_up
誰も聞いてはいません。
今だけは、お父様と……。
link
フレン
volume_up
……わたくしは、お父様と二人で静かに
生きた日々が嫌いなわけではありません。
link
フレン
volume_up
けれども、きっと……わたくしはもう
子供ではないのです。
link
フレン
volume_up
お父様がお母様と出会って、わたくしが
生まれたように……わたくしもまた……
link
セテス
volume_up
ああ……わかっている。
だが、それ以上は言わないでくれ、フレン。
link
セテス
volume_up
お前の成長は、父としてとても嬉しいよ。
何が起ころうと私とお前を繋ぐ絆はある。
link
セテス
volume_up
だが……せめてこの戦いが終わるまでは、
お前を心配することを許してくれ。
link
セテス
volume_up
父として、お前を失いたくない。
かけがえのないお前を……。
link
フレン
volume_up
ふふ、わかりましたわ。
仕方がありませんね。
link
フレン
volume_up
お父様には、お父様とお母様の二人分、
心配することを許してあげますわ。
link
フレン
volume_up
2倍までですからね、キッホルお父様。
link
セテス
volume_up
……ああ。
ありがとう、セスリーン。