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ディミトリ
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……ああ先生、ちょうどいいところに。
後で、少し付き合ってもらえないか。
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ディミトリ
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いや、少し剣の稽古に……
と言っても、俺の稽古ではないんだが……。
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ディミトリ
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実は、少し前から大修道院で保護している
孤児たちに、剣を教えてやっていて、な。
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ディミトリ
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……自分でもそう思う。正直、子供の相手は
あまり得意なほうではないんだが……。
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ディミトリ
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先日、騎士団の方と打ち合っているところを
見ていた少年たちがいてな。
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ディミトリ
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戦い方を教えてくれ、と熱心に
頼み込んでくるものだから、つい。
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ディミトリ
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もっと見てやりたいのは山々なんだが、
俺にも俺のやることがあるわけで……
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ディミトリ
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……先生なら、剣の腕も確かだ。
すまないが、少し手を貸してくれないか。
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ディミトリ
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ありがとう、恩に着る。
この礼は、いつか必ずしよう。
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ディミトリ
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……彼らは皆、戦争や病、それぞれの事情で
家族や家を失った者たちばかりだ。
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ディミトリ
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こんなことを言うのは傲慢だと思うが
……支えになってやりたいんだ。
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ディミトリ
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俺の親もすでに亡くなっているから、
何となく、他人とは思えなくて。
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ディミトリ
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……ダスカーで父と継母を亡くした後、
王城に、俺の味方はほとんどいなかった。
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ディミトリ
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ドゥドゥーだけ、と言っても
過言ではなかったかもしれないな。
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ディミトリ
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母は俺を産んですぐに病で亡くなったし、
伯父とは……仲が、良くなかったから。
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ディミトリ
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かつては気を許せる者たちもいた。
家族、武芸の師、友人、王城の兵士たち……
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ディミトリ
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……だが、そういった者たちは皆、
4年前を境にいなくなってしまったからな。
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ディミトリ
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ああ、もちろん城の外には、そういう
相手もいたんだ。例えば、ロドリグとか……
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ディミトリ
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フラルダリウス公……と言えばいいかな。
父の友人で、フェリクスの父親にあたる。
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ディミトリ
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あいつが王都を訪れるたび、
狩りに、遠乗りに、散々連れ回した。
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ディミトリ
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ドゥドゥーを兄弟のようなものとするなら、
もう一人の父親のような存在だな。
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ディミトリ
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その真似事ではないが……
俺もああいう人になりたい、と思うんだ。
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ディミトリ
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誰かの支えになれるような人に……
誰かの心を救ってやれるような人に。
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ディミトリ
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……俺の身の上話なんて聞いたところで
面白いものでもなかったな。すまない。
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ディミトリ
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それよりも先生、約束、忘れないでくれよ。
頼りにしているからな。