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セテス
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フェリクス、
相変わらず独りで訓練か?
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フェリクス
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あなたも相変わらず私の監視ですか。
……暇なことだ。
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セテス
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監視しているつもりはない。
むしろ君を案じているのだよ。
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セテス
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君が仲間と距離を置くのは、仲間個々人が
気に入らないからではあるまい。
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セテス
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君が気に入らないのは……彼らが考えている
騎士の在り方、そのものではないのか?
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フェリクス
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……フン。
本当に、セテス殿はよく見ておられる。
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フェリクス
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そのとおりです。騎士どもの
考えというものだけはまるで理解できない。
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フェリクス
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……そんな理想を奉じる連中と、
仲良くできるわけがないでしょう。
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セテス
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……その考えは、君が兄を亡くした
「ダスカーの悲劇」から来ているのか?
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セテス
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話だけは聞いている。王家の騎士だった
君の兄は、王子を守って命を落としたと。
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フェリクス
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兄は職責を果たしたまで。……問題は父だ。
城に戻った兄の武具を見て奴はこう言った。
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フェリクス
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……冗談ではない。
死を美化し讃えるのが、騎士道だ。
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フェリクス
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……どうです、セテス殿。
こんな私を破門にでもしますか?
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セテス
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まさか。言っておくが私は騎士ではない。
故に君に騎士道を説くつもりなどない。
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セテス
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何を是とし何を非とするかは個々の自由だ。
教義の範囲内であればな。
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フェリクス
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ならば、私が連中と馴れ合わんことも
許容していただきたいものですが。
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セテス
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許容するしないの話はしていない。
これは、若い君への年長者からの忠告だ。
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セテス
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君が揺るがぬ信念を持っているように、
他の者も皆、それぞれに信念を持っている。
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セテス
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異なる信念を抱く者を忌み嫌うだけでは、
人の世は成り立たん。そうは思わないか?
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セテス
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まったく同じ信念を持つ者など、
そうはいないのだからな。
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セテス
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君に信念を曲げろとは言わん。
だが、己と違う者を受け入れる度量を持て。
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フェリクス
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なぜ私に、わざわざそのような話を?
私など、放っておけば良いでしょうに。
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セテス
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私は君を頼みにしているからだよ。
先ほどの話を聞いて、尚更ね。
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セテス
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私もなかなかどうして変わり者だからね。
君とは馬が合うと思っていた。
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フェリクス
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……まあ、あなたがそこまで仰るならば
多少の努力はしてみるとしましょう。
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セテス
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うむ。君がいい意味で私の予想を
裏切ってくれることを期待しているよ。