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リシテア
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……あんたでも野花を摘むんですね。
手入れされた花しか興味ないと思ってた。
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ローレンツ
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花は自らの力で咲き誇る姿が一番美しい。
リシテア君、君にも1本……。
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リシテア
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あ……ごめんなさい。その、棘が危ないし。
命を摘み取るのは、好きではなくて……。
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ローレンツ
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……君は、優しいんだな。
名も無き野の花にも情けをかけるとは。
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ローレンツ
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次期当主が慈愛のある人物なら民も安らぐ。
周辺諸侯の信頼も容易に得られるだろう。
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ローレンツ
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昔からレスターの諸侯は利己的に過ぎた。
他者を利用することしか考えてこなかった。
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ローレンツ
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だが、君のように他者の痛みがわかる者が
現れれば、状況を変えられるかもしれない。
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リシテア
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……その期待には応えられません。
コーデリア家は、父の代で終わるから。
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ローレンツ
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そんな……! 政治に興味がないとはいえ、
300年の歴史を持つ名家を潰すつもりか?
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ローレンツ
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これは、君だけの問題ではないぞ。
貴族の家が滅べばどうなる?
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ローレンツ
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領民は混乱し、路頭に迷う者も出よう。
何より諸侯間の勢力均衡も崩れることに……
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リシテア
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わたしは長生きできない体なんです。
兄弟もいないし、わたしが死ねば終わり。
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リシテア
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それに……親もわたしも、貴族に生まれた
ことで、とても苦しんできたんです。
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リシテア
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帝国の内乱に巻き込まれ、責任を負わされ、
口では言えないほどの酷い仕打ちを受けた。
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リシテア
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だから……父と母には、
せめて穏やかな余生を送らせてあげたい。
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リシテア
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領民が困らないよう、わたしが死ぬまでに
できるだけの手は打つつもりでいます。
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リシテア
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この先の世界がどうなるのか、
心配はしていたけど……
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リシテア
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あんたのように真剣に未来を考えている人が
いるのなら、きっと大丈夫。そうでしょう?
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ローレンツ
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……君は、自分の不幸を嘆くこともなく、
この世界の未来までも案じてくれるのか。
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ローレンツ
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……すまない、リシテア君。
僕は君のことを何も理解していなかった。
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リシテア
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気にしてないけど、どうしてもというなら
お菓子とお茶で手を打ちます。……でも。
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リシテア
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未来を語るなら、あんたの隣を共に歩ける、
元気で逞しい人にしてあげてくださいね。
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ローレンツ
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リシテア君……。
わかった。また共にお茶を楽しもう。