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メルセデス
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あら~、こんばんは、ディミトリ。
あなたもお祈りかしら~?
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ディミトリ
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まあ、そんなところだ。
メルセデスこそ、こんな遅くに?
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メルセデス
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ええ、私もお祈り。真夜中の大聖堂って、
静かで何だか落ち着くから、好きなのよ~。
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ディミトリ
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ああ、確かにそうだな。ここにいると
落ち着くというのは、俺にもわかる。
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メルセデス
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……こういう静かな夜はね、ここに来て、
いなくなった人のことを思い出すの~。
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メルセデス
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この戦争で、数え切れないほど
たくさんの人たちが亡くなったでしょ?
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メルセデス
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その人たちが女神様のお側で、
ずっと幸せに過ごせますように、って……
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メルセデス
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こうして祈るくらいしか、
私にはできないのだけれど。
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メルセデス
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あら~? あなたも優しいと思うわよ?
むしろ優しすぎて、良くないくらいよね~。
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ディミトリ
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俺が優しい? ……それは違う。
俺はただの人殺しで……醜悪な化け物だ。
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メルセデス
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……ねえ、ディミトリ。あなたが人を
手にかけてきたのは、何のためなの?
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メルセデス
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それは家族だとか、お友達とか……
死んでしまった人たちのためでしょう?
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メルセデス
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本当の化け物は、自分のために殺すの。
あんな悲しい顔で人を殺したりしないわ。
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メルセデス
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だから、自分を化け物だなんて……
そんなこと、言っちゃ駄目よ。
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ディミトリ
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俺は……ずっと怖くて、仕方がないんだ。
「彼ら」の顔を忘れていくことが……
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ディミトリ
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死んでいった……俺が殺してきた人々。
その死を忘れることなど、許されない。
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ディミトリ
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……どんな動機があったとしても、
それは、化け物の所業だ。
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メルセデス
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……あのね。悲しいことだけれど、人って、
どうやっても忘れてしまう生き物なのよ~。
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メルセデス
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どんなに忘れるのが怖くても、過去はただ
懐かしむもので、決して戻れはしない。
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メルセデス
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結局、私たちは今を生きるしかないのよね。
死んだ人は、絶対に生き返らないから。
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ディミトリ
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……その言葉を5年前に聞いていたら、
もっと違う人生もあったかもしれないな。
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メルセデス
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……ねえ、ディミトリ。今、何がしたい?
まだ、死んだ人たちのために戦いたいの?
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メルセデス
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王様としてのあなたじゃなくて~、
同級生のディミトリの願いを聞きたいわ。
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ディミトリ
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俺自身の願い、か。
……そんなもの、考えたこともなかったな。
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メルセデス
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う~ん、そうねえ。あなたが王様になっても
一緒にお裁縫や剣のお稽古をしたい、とか?
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ディミトリ
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………………。
メルセデス。お前の隣に立つ資格は……
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メルセデス
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もうっ。化け物だ、資格だ、って、
あんまり卑屈だと嫌いになっちゃうわよ~?
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メルセデス
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私は……ただあなたの側にいたいわ。
それ以上の理由が、必要かしら~?
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ディミトリ
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……ああ、俺の願いも同じだ。
俺も、許されるなら……お前の側にいたい。
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メルセデス
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……ふふ、良かった~。
そう思ってるのが、私だけじゃなくって。
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メルセデス
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それじゃ、もう少しだけ……
こうして、二人きりでいましょうか。