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フェルディナント
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おや、珍しいところで会ったな、ドロテア。
君は信仰に篤くなかった気がするが……
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ドロテア
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知ってたのねえ、フェルくん。
確かに私は、敬虔な信徒とは言えません。
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ドロテア
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貴族重視の不平等な社会を作った女神の
せいで、酷い目に遭ってきたんだから。
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ドロテア
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ま、いいかしら。私が孤児だったのは、
どうせ知ってるでしょ?
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ドロテア
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貴族街の裏通りで施しを乞うたり、残飯を
漁ったりして飢えを凌ぐ毎日だった。
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ドロテア
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ふふっ、その後マヌエラ先輩に見出されて、
私は歌姫になったの。
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ドロテア
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歌姫の私に対する貴族たちの態度は、
それはそれは素晴らしいものだったわ。
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ドロテア
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私に唾を吐きかけた貴族たちが、
その口で私の歌と見目を褒めるの。
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ドロテア
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私を蹴り飛ばした貴族が、美しい
靴を私に贈るのよ。本当に滑稽だった。
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ドロテア
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ええ……? 違うと?
だって、私は覚えてます。
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ドロテア
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あれは、歌姫になることが決まった日……
私、浮かれてたわ。
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ドロテア
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少しでも汚れを落としておこうと、
街の噴水でこっそり水浴びして……
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ドロテア
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歌いながら、はしゃいでた。
そこに貴方が現れたのよ。
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ドロテア
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やっぱり心当たりあるんでしょ。
貴方は、私を睨んで、すぐに走り去った。
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ドロテア
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次に学校で会った時には、貴方は別人の
ような笑顔で、私に話しかけてきた。
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ドロテア
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花に群がる、蜜蜂のようにね。
蕾の頃は見向きもしなかったくせに。
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フェルディナント
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勇気を出して戻って来た時には、
もう誰もいなかった。夢だと思っていたよ。
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ドロテア
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……そうね、信じるわ。
お菓子を作ってた貴方を見て感じたの。
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ドロテア
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貴方は、私の嫌いな貴族とは違うって。
でも、なかなか受け入れられなくて……。
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ドロテア
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ふふふふ。なら、悪い虫がつかないように、
見張ってくれる?