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ローレンツ
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やあ、マリアンヌさん。
先日君に借りた書物は、実に面白かった。
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ローレンツ
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興味深い書物に巡り合わせてくれた礼に、
是非お茶をご馳走したいのだが……。
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マリアンヌ
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え、あ、あの……。
少し用があるので、夕方でも……
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マリアンヌ
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本日は、お招きいただき、
ありがとうございます……。
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ローレンツ
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来てくれて嬉しいよ。
そうかしこまらないでくれたまえ。
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ローレンツ
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そうか! 僕の好きな銘柄だが、
気に入ってもらえて嬉しいよ。
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ローレンツ
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こちらも口に合うだろうか?
実家のほうの焼き菓子だが……。
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マリアンヌ
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はい。甘くて……
渋めのこのお茶によく合います……。
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ローレンツ
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それは良かった! 君とは味の好みも合う。
是非また、お茶の相手をしてくれたまえ。
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マリアンヌ
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私、実は……
あなたに言わなければいけないことが……
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マリアンヌ
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ずっと、隠してきたことがあるんです。
実は……あの……私には……
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ローレンツ
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震えているじゃないか。そうまでして
僕に何かを打ち明ける必要などない!
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ローレンツ
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僕が見たいのは、そんな君じゃない。
笑顔の君が見たいんだ。
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ローレンツ
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きっと、今、君が言いかけた言葉の先に、
君の魅力の秘密が隠されているのだろう。
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ローレンツ
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それでも、君が笑顔で話せる日が来るまで、
僕は聞きたいとは思わない。
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ローレンツ
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僕はね、相手のすべてを知りたいなどという
貪欲で下品な男とは違うのだよ。
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ローレンツ
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謎めいた君のままで、十分素敵だ。いや、
むしろ謎めいているからこそ魅力的……
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マリアンヌ
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ローレンツさんって、面白い。
面白くて……それに、優しいんですね。
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ローレンツ
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おお、良い笑顔だ。
静謐な美も良いが、晴れやかな美も良い。
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マリアンヌ
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笑ったの、久しぶりです。
あなたなら、私を変えてくれそう……
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ローレンツ
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ははは。そのままでいいと言っているのに、
君は変わりたいと言うのか?
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ローレンツ
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ならば、その手伝いくらいはできるだろう。
僕と一緒に、殻を破ってみるかい?