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セテス
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マヌエラ、先日話した……その……
聖セスリーンの件だが……。
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セテス
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もしまだ誤解しているようなら、
きちんと訂正しておきたくてね。
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マヌエラ
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あら、心配しなくても、あなたの想いを、
白日の下に晒したりなんてしないわ。
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セテス
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はあ……。そうではないのだ。
どうしたらわかって……
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セテス
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……仕方がない。
少し昔話をしよう。
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マヌエラ
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あら、どんな話?
セテスさんの過去、興味があるわ。
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セテス
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もうずっと昔のことだが、私には妻がいた。
もう亡くなって久しいのだが……。
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セテス
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聡明で心優しく、いつも賑やかで、
それは素晴らしい女性だったよ。
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セテス
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そして彼女と結ばれて間もなく、
私と彼女の間には、娘が一人生まれた。
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マヌエラ
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セテスさんに、奥さんと娘さんが……?
そんな話、誰もしてなかったわよ?
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セテス
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知る者は少ない。娘を守るため、
あまり他人には話してこなかったのだ。
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セテス
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妻を亡くして以来、私は娘を守ることを
第一に考えて生きてきた。
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セテス
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聖セスリーン像に似た雰囲気のある娘でね。
だからこの像に誓いを……
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マヌエラ
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……あら? ちょっとおかしいわね。
あたくし、引っかかるわ。あたくし。
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マヌエラ
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前に聞いたセテスさんの好みの女性像は、
聖セスリーンそのものだったはず。
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マヌエラ
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先ほど聞いた奥様よりも、娘さんのほうが
セテスさんの好みに合致しているのかしら?
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セテス
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娘も、聖セスリーン像に雰囲気が似ている
だけで、清楚で物静かというわけではない。
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セテス
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それに、好みの女性と、結ばれる女性が
同じとは限らない。これは世の真理だ。
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マヌエラ
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うふ……うふふふ、そんな真面目な顔で、
『世の真理だ』なんて言わないで。
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マヌエラ
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あなたって、いつも堅苦しいのに
たまに本気で笑わせてくるんだから。
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セテス
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そこまで笑うことか?
はあ……君はまるで妻と同じことを言うな。
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マヌエラ
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あなたの、亡くなった奥様と?
もしかして似ているのかしら、あたくし。
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セテス
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似ていない。
いや……? いやいや、似ていない。
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マヌエラ
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うふふ、その言い方、少しは似てるのね。
あらあら、光栄だわ。
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マヌエラ
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……ねえ、セテスさん。
あなたは誰かと再婚する気はないの?
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セテス
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再婚? 考えたこともなかったな。
娘のことで、それどころでは……。
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マヌエラ
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奥様が亡くなられて随分経つんでしょ?
少しは考えてもいいんじゃないかしら。
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マヌエラ
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案外、身近にいるんじゃないかしら?
お似合いの人が。例えば、目の前にも……
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セテス
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ん? どうしたマヌエラ、
何をもごもごと……。
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セテス
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しかし、再婚か……。貴女に言われるまで、
そんな選択肢があることに気づかなかった。
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セテス
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娘も私から離れたいようだし、そろそろ
考えてみてもいいのかもしれないな……。
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セテス
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娘も……私がずっと独り身でいることを、
望んではいなかったとは思うが……。
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マヌエラ
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あたくしで良ければ、相談に乗るわ。
今夜あたりどう? お酒でも飲みながら……
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セテス
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……ほどほどにしてもらうぞ。
酔った貴女を運ぶのは遠慮したいのでな。