link
ドロテア
volume_up
あのね、ユーくん。
実は私……見ちゃったのよ。
link
ドロテア
volume_up
貴方が路地裏で、街の子供たちに
歌を歌ってあげているところ。
link
ドロテア
volume_up
とっても上手だったわ!
私、思わず胸を打たれちゃった。
link
ドロテア
volume_up
あの歌、ミッテルフランク歌劇団が
帝都で上演した歌劇に出てくるものよね?
link
ドロテア
volume_up
私が歌姫だった頃の……。そらんじられる
ほど何度も見に来てくれたのかしら。
link
ユーリス
volume_up
ああ……まあ、何度かな。
よく覚えてるぜ、舞台に立つお前の姿。
link
ユーリス
volume_up
お前に勝る女はこの世にいない、なんて
帝都の貴族は言い交わしていたが……
link
ユーリス
volume_up
まさかその歌姫にこんなところで
出会うとは、とんでもねえ偶然だよ。
link
ドロテア
volume_up
ねえ、ユーくん。貴方、歌劇に興味はない?
きっと才能があると思うのよ。
link
ユーリス
volume_up
……何だよ。
“神秘の歌姫”直々に勧誘か?
link
ドロテア
volume_up
男性の歌い手はね、貴重なのよ。
歌姫に憧れる女の子は多いけれど……
link
ドロテア
volume_up
その相手役も、歌姫と同じくらいの
才能を求められるでしょ?
link
ユーリス
volume_up
悪いが、興味はねえな。
歌劇だなんて真っ平御免だ。
link
ドロテア
volume_up
あら……つれないわね。
そんなけんもほろろに断るなんて。
link
ユーリス
volume_up
俺は、誰かの前で歌うってのが
この世で一番嫌いなんだよ。
link
ドロテア
volume_up
その割には、子供たちに歌を
歌ってあげてたじゃない。
link
ユーリス
volume_up
具合が悪くて眠れねえって言うから、
しばらく歌ってやってただけさ。
link
ユーリス
volume_up
“神秘の歌姫”と同じ舞台に立って、肥えた
貴族たちの衆目の中で歌うだなんて……
link
ドロテア
volume_up
……なんだか棘のある言い方ね。
歌劇の舞台は、そんな場所じゃないわ。
link
ユーリス
volume_up
ああいや……悪かった。
ただのくだらねえ八つ当たりだよ。
link
ユーリス
volume_up
だが、頼む。
金輪際、俺に歌の話は振らないでくれるか。
link
ユーリス
volume_up
これからも、仲間として
上手く付き合っていくために、な。
link
ドロテア
volume_up
……歌が嫌いで、あそこまで
上手くなるものかしら?