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ギルベルト
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あなたは……
……どうしました、このような夜分に。
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ギルベルト
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もう、夜も遅い。
明日に備え、休まれたほうが良いかと。
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ギルベルト
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見てのとおりです。
……主に祈りを捧げていました。
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ギルベルト
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……すでに、伝えましたね。
私が、王家に仕える騎士であったのは。
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ギルベルト
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一介の兵士に過ぎなかった若い私を、
当時の王は騎士に取り立ててくださった。
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ギルベルト
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そして私には、王族の守護と、
教導の任が与えられました。
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ギルベルト
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は……あなたと同じ、教師のようなものと
考えていただいて差し支えないでしょう。
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ギルベルト
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そのとおりです。
もう40年近く、勤め上げてきました。
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ギルベルト
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ランベール陛下やディミトリ殿下に
武芸や兵法、学問を指南する傍ら……
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ギルベルト
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その御身を守り続けてきました。
……あの日までは。
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ギルベルト
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私は、職責を全うできなかった。
……無力だったのです。
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ギルベルト
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襲撃の報を受けた際には、時すでに遅く。
騎士や兵士を死なせ、陛下も……
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ギルベルト
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私があの日、もっと早くダスカーに
辿り着けていれば良かったのです。
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ギルベルト
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今の殿下をあのようにしてしまったのは……
他でもない、私なのかもしれません。
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ギルベルト
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そして、私は妻子を捨てて国を逃げ出した。
……罪に罪を重ねたのです。
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ギルベルト
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国も、家族も……本当に守るべきものの
すべてを放り捨てて、私は逃げた……。
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ギルベルト
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……一生を懸けて、
私は、私の罪と向き合わねばならない。
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ギルベルト
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ですが……私が、すでに亡い陛下や
あの日死んでいった者たちにできるのは……
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ギルベルト
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娘と妻に詫びることや、殿下に尽くすことが
私にとっての贖罪です。ですが……
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ギルベルト
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生者への贖罪を果たせても、死者への贖罪は
こうして祈ることでしか果たされない……
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ギルベルト
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昔……あなたと同じようなことを
言った方がおりました。
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ギルベルト
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……いけませんね。
こう年を食うと、思い出話ばかり。
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ギルベルト
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さて、やはりもう戻りましょう。
……祈りは、もう済みましたから。